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リリイ|主任ケアマネ・社会福祉士・介護福祉士
居宅ケアマネとして19年間現役で勤務。現場目線で制度の背景と変化をお伝えします。
なぜケアマネだけ処遇改善の対象外だったのか。その3つの理由と、令和8年度(2026年)でついに変わった経緯を現役の主任ケアマネが解説します。
📌 この記事はこんな方に向けて書きました
✓
「なぜケアマネは処遇改善がないのか」と長年疑問に感じてきた方
介護職員は処遇改善加算で給与が上がっているのに、同じ介護保険制度を支えているケアマネジャーだけが対象外。利用者のニーズを把握し、サービスを調整し、チームの要として動いているのに——その理由には、制度設計上の3つの構造的な問題がありました。
目次
🔍処遇改善の対象外だった理由【3つの構造的な問題】
図解①:報酬体系の違いによる対象外の構造
理由
①
REASON 01
報酬体系が「サービス提供」ではなく「マネジメント」だから
介護報酬の仕組みは大きく2種類に分かれます。
| 種別 | 対象サービス | 処遇改善加算 |
| 直接サービス提供型 | 訪問介護・通所介護など | ✅ 対象 |
| マネジメント型 | 居宅介護支援(ケアマネ) | ❌ 対象外(令和8年度まで) |
国の処遇改善加算は当初、「直接介護を担う人材の確保・定着」を主目的として設計されました。そのため、マネジメント職であるケアマネジャーは「直接介護職員ではない」という理由で対象外とされてきたのです。
図解②:利用者負担ゼロという特殊な位置づけ
理由
②
REASON 02
「利用者負担ゼロ」という特殊な位置づけ
居宅介護支援は、利用者に費用の自己負担がない唯一のサービスです。ケアプラン作成・給付管理などの費用はすべて介護保険から支払われており、国としては「この報酬の中で運営してほしい」という姿勢がありました。
「利用者負担なし」という特殊性が、追加の処遇改善加算を設けることへの制度設計上の議論を難しくしてきた要因のひとつです。
図解③:介護職員とケアマネの「職種の壁」
理由
③
REASON 03
介護職員とケアマネの「職種の壁」
処遇改善加算は当初から「介護職員(介護福祉士等)が主な受益者」として設計されていました。ケアマネジャーは「介護職員の上位職」として位置づけられる側面があり、「介護職員向け加算の対象にすることで賃金体系の整合性が崩れる」という議論が長年続いてきました。
この3つの構造的な問題が重なり、ケアマネは長年処遇改善の恩恵を受けられないままだったのです。
🎯では、なぜ令和8年度(2026年)に変わったのか
令和8年度 処遇改善加算の3大変更点
アップデート ①
💴
月額1.0万円(3.3%)ベースアップ
対象が「介護職員」から「全介護従事者」へ拡大
アップデート ②
📈
さらに月額0.7万円(2.4%)上乗せ
生産性向上・協働化に取り組む事業所に追加加算
アップデート ③
🆕
居宅介護支援が正式対象に追加
訪問看護・訪問リハビリ・居宅介護支援等が新たに対象に
上乗せ要件を満たした場合の合計最大賃上げ額
月額 最大 1.9万円
(①1.0万円 + ②0.7万円 = 合計最大6.3%相当)
📋なぜこのタイミングで実現したのか【3つの背景】
実現を後押しした政策的背景
背景 ①
📉
ケアマネの深刻な人材不足
試験受験者数がピーク時から大幅減少。「給与が低い・処遇改善がない」ことが離職・職種離れの原因として指摘されてきました。
背景 ②
🏛️
介護人材確保政策の強化
国全体として介護人材の確保・処遇改善への取り組みが強化される中、「なぜケアマネだけ対象外なのか」という声が無視できない大きさになりました。
背景 ③
📐
処遇改善加算の対象拡大という流れ
訪問看護・訪問リハビリも同時に対象追加。介護保険サービス全体をカバーする方向への制度拡充が一気に実現しました。
🔀令和8年度から変わった「加算区分」の構造
令和8年度6月以降の加算区分の変化
4月・5月
従来型 加算Ⅰ〜Ⅳ(従来通り)
↓ 6月以降に変化
6月以降
💡 最大の加算を得るには「特例要件」をクリアして「ロ」区分を狙うことが重要です。ただし令和9年3月末までの整備誓約で申請できる特例措置もあります。
🔭今後の展望|ケアマネの処遇改善はどうなる?
令和8年度以降の展望と課題
令和8年度での処遇改善加算適用は、あくまでスタートラインです。現状の課題と今後の方向性を整理します。
⚠️
課題①:加算率が他サービスより低い可能性
居宅介護支援への処遇改善加算は、訪問介護や施設系サービスと比較して加算率が低く設定されている可能性があります。次回以降の改定で加算率の引き上げが議論される可能性があります。
⚠️
課題②:事業所の取得状況にばらつき
制度があっても事業所が加算を取得しなければ職員には反映されません。特に小規模な居宅介護支援事業所では、加算取得のための事務負担を懸念して見送るケースも考えられます。
⚠️
課題③:「ロ」区分と「イ」区分の格差
生産性向上等の特例要件をクリアできる環境がある事業所とそうでない事業所では、職員への分配額に大きな差が生まれる懸念があります。
📌 次期改定(2027年以降)の注目ポイント
居宅介護支援の処遇改善加算率の見直し・引き上げ / 加算取得要件の緩和(小規模事業所への対応) / 特例要件の恒久化・拡充 / ケアマネ試験受験者数の回復状況との連動
💡処遇改善だけでは解決しない「ケアマネの給与問題」
処遇改善と事業所選びの関係
令和8年度の処遇改善加算適用は大きな前進ですが、それだけでケアマネの給与問題が根本的に解決するわけではありません。
処遇改善を確実に受けるためには、以下の2点が前提になります。
加算を適切に取得している事業所で働くこと
まず「うちの事業所は加算を取得しているか」「何区分か」を管理者に確認しましょう。取得していない事業所では処遇改善を受けられません。
分配方針が透明で職員に適切に還元されていること
「ケアマネにも分配されるか」「いくら分配されるか」を確認しましょう。加算を取得していても、分配が不透明な事業所では実感しにくいことがあります。
⚠️ 現在の職場でこれらが満たされていない場合、処遇改善加算を適切に取得・分配している事業所への転職が、給与を上げる最も現実的な方法のひとつです。転職によって月数万円単位の収入改善につながる事例もあります。
📌まとめ
「ケアマネに処遇改善がない」という時代は完全に終わりました
▶ ケアマネに処遇改善がなかった3つの理由
1
報酬体系が「マネジメント職」として区分されていたため
2
居宅介護支援が「利用者負担ゼロ」という特殊な位置づけだったため
3
処遇改善加算の設計が「直接介護職員向け」として設計されていたため
▶ 令和8年度(2026年)に変わったこと
✓
月額最大1.9万円(特例要件クリア時)の賃上げが実現
▶ 今後の展望
→
加算率の引き上げ・取得要件の緩和が次回改定の議論になる見込み
→
事業所の取得状況によって職員への還元に格差が生じる懸念も
「制度ができた→自動的に給与が上がる」ではありません。自分が働く事業所の加算取得状況をしっかり確認することが、処遇改善を確実に受け取るための第一歩です🌸
🌿
⚠️ 事業所が処遇改善加算を算定しない方向であれば…
「うちは算定しない」と言われた場合、処遇改善を受けられる事業所への転職を真剣に検討する価値があります。
加算を適切に取得・分配している事業所では、月数万円単位の収入改善につながる事例もあります。
❓よくある質問(Q&A)
Q
令和8年度以前に居宅ケアマネが処遇改善を受ける方法はありましたか?
居宅ケアマネは原則対象外でした。ただし事業所が他サービス(訪問介護・通所介護等)を併設している場合に限って、一部分配を受けられるケースがありました。施設ケアマネは施設の介護職員と同様に従来から対象でした。
Q
令和8年度から自動的に処遇改善を受けられますか?
いいえ。事業所が加算を申請・取得し、職員に分配して初めて反映されます。勤務先が加算を取得しているか必ず確認しましょう。
Q
処遇改善の議論はいつ頃から始まっていたのですか?
ケアマネへの処遇改善適用については、介護報酬改定のたびに議論されてきました。制度設計の複雑さや財源の問題から実現が遅れてきましたが、令和8年度(2026年)でついに実現した形です。
取得できます。キャリアパスⅣ(年額440万円以上)については小規模事業所等への例外措置があります。また特例措置を活用すれば令和9年3月末までの整備誓約で「ロ」区分の申請が可能です。
求人票や面接時に「処遇改善加算の取得区分(Ⅰロ〜Ⅳ)」と「ケアマネへの分配方法・分配額」を直接確認しましょう。転職サイトのコンサルタントに確認を依頼するのも有効です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。何か一つでも参考になれば嬉しいです。一緒に頑張りましょう🌸